20年越しに『新世紀ウルトラマン伝説』の真実を暴く
はじめに
みんなは『新世紀ウルトラマン伝説』という作品を知っているだろうか? これは名作映画である『ウルトラマンコスモス2 THE BLUE PLANET』の同時上映として製作された2002年公開の映画作品。つまりは今年で20周年という訳だ。ちなみに上映時間は15分。
今回は、この作品中に登場する謎のウルトラ文字について迫っていく。
新世紀ウルトラマン伝説とは
この『新世紀ウルトラマン伝説』は、本編ではない所謂外伝作品である。そのため近年のウルトラファンの中にはこの作品を知らない人もいるのではないだろうか。
だが実はこの作品、変な所で有名だったりする。なんとこの映画の中で、いつも僕らを守ってくれるウルトラ戦士たちがひょうきんな音楽に合わせてダンスをしているのだ。
このなんともシュールな光景が話題を呼び、後年には『トリビアの泉』というテレビ番組でも取り上げられてしまったとか。実際28人ものウルトラマン*1が一堂に会して踊っている姿にはウルトラファンでもそうでなくても、新たな感情が芽生えること間違いないだろう。
そのためこの作品の事をギャグ作品か何かだと思っている人もいると思うのだが、実はこの『新世紀ウルトラマン伝説』という作品、ウルトラファンに向けたMAD作品として屈指の完成度を誇っている。
新世紀ウルトラマン伝説のここが凄い!
この作品は過去のウルトラシリーズ*2の名場面の再利用+新規映像という構成でできている。あ、あとダンス。
ストーリーとしては主人公であるボクとパパ*3が不思議な力で過去のウルトラマン達の世界に飛ばされ、彼らの戦いを見守るというもの。 ちょっとした合成によって「ボクたち」が負けそうなウルトラマンを救うという歴史改変*4が成されていたりするのも見どころだ。
だが一番のポイントは使用楽曲だろう。前述の『ウルトラマンエクササイズ』に加え、Project DMMが歌う『空想少年』*5、そしてなんと言っても各ウルトラシリーズのOPのアレンジがリミックスされたBGMになっている。
懐かしのウルトラマン達の勇姿を、思い入れのあるあの曲のメドレーと共に振り返ることができるというのは、正直めちゃくちゃ興奮する。『ザ・ウルトラマン』や『G』に『パワード』、『USA』と言ったマイナーどころまで取り入れられているのがまたポイントが高い。*6
使用された楽曲は『ウルトラマンコスモス2 THE BLUE PLANET』のサントラにフル尺で『新世紀劇場版ウルトラマン伝説 ~including 「空想少年」 (フルサイズ)』として収録されている。今となっては貴重な音源である。*7
こんな激熱なウルトラシリーズの振り返りと、コミカルな「ウルトラマンエクササイズ」が交互に繰り広げられ、その温度差に風邪を引いてしまいそうな程である。
そしてラストには突然現れたなんかよく分からんご都合主義の塊のような巨大怪獣、暗黒妖鬼 天空魔*8と全ウルトラ戦士達の決戦が描かれる。ここでしか見ることができないガイア&アグルの合体光線があったり、ほぼ全員のスペシウム光線ポーズを見ることができたりと、実は映像としての価値は高かったりする。
音楽の壮大さも相まって天空魔撃破時にはなんだかそこはかとなく感動的な気分にさせられるものの、結局ラストは河川敷に子供達が集まってのウルトラマンエクササイズで〆られるという、なんとも感情の乱高下が激しい映画である。
ただ少なくとも言えるのは、ウルトラファンはこの映画を観てまず間違いなく損はしないという事だ。当然ながら残念なことにこの『新世紀ウルトラマン伝説』は現在各種サイトで配信等はされていないものの、今ならまだAmazonで新品のDVDを購入することもできる。もしかしたら今後万が一何かの拍子に奇跡的に配信が開始されるかもしれないが*9、念のため手元に置いておくのも良いだろう。
本題
さて本題。この作品中にてボクとパパは色々な時空を飛び回るのだが、ティガとスキューラ*10を追って深海までやってくるシーンがある*11。ここで彼らはウルトラ文字を使って*12ティガを応援するのだが、そこで使用したウルトラ文字が問題となる。この記事の冒頭にあったアレだ。
「ウルトラ文字なんて対応表があるんだしすぐ読めるじゃん」と思うかもしれないが、事はそう簡単ではない。映画内で使われた文字と対応表を載せるので、とにかく実際に見てほしい。(画像が見にくかったらごめん)
さてこれが解読できるだろうか?
できないのだ。
2文字目の「ン」だけは判別できるものの、1文字目と3文字目に関しては父音を表すそれでしかないし、4文字目に至ってはもう完全に新しい文字と化してしまっている。
今まで幾度となくこの作品を見返してきたが、その度ここに何が書かれているかについてはずっとスルーしてきた*13。だが20年目にしてふと思い立って解読しようとしたらこれである。正直頭を抱えた。
ここで「2002年当時のウルトラ文字は現在と別ルールだったのでは?」という至極当然の疑問が湧いてくるが、『ウルトラマングラフィティ(1990)*14』という作品でデザインされて以来設定は変わっていなさそうなので、その線は残念ながら無い。
実際なんて書いてあるんや
1文字目が「カ行を表す父音」、2文字目が「ン」、3文字目が「ハ行を表す父音」であること、それに加えてこの状況を加味すると、恐らくここに書かれているのは「ガンバレ」であると容易に推測できる。
この答ありきで逆算的に対応表を眺めるととある事に気付く。
確かに見方次第ではこれら父音が「ガ」と「バ」を表しているように見えてしまうのだ当然、当時はこれとは別の対応表を用いたであろうが、恐らく似たようなレイアウトだったのだろう。そうでも無いとこんな現象は起こりえない。
さてこうなると「ガンバレ」と書かれているのはほぼ確実で、となると「この作品的な」答え合わせは次のようになる。
これでも「レが全然違うじゃないか」と突っ込みたくなるかもしれないが、他のウルトラ文字と比べるとかなり近似している。恐らく資料の印刷が荒かったとかそんな原因でこうなってしまったのだろう。
「え、そんなミスする?」というミスがいくつも積み重なっているが、恐らく当時の現場は大変だったのだろう……たぶん。
ちなみに肝心のウルトラマンティガ目線でこれがどう読めるか考えてみよう。ウルトラ文字は父音+母音で表されるので、感覚としてはローマ字に近いと言える。
つまり「ガンバレ」は「GA N BA RE」となる。
だが今回1文字目と3文字目が父音オンリー、4文字目に至っては崩壊しているので実際には
「G N B dʒ」
恐らくこんな風に見えているのではないだろうか。うーん。まあでも応援するって気持ちが大事だよね!
まとめ
とまあ割としょーもない結論に至ってしまった。恐らくこのウルトラ文字を解読した古のウルトラファンも数多くいるとは思うが、ざっと検索して適当な文献が見つからなかったので、ここにこういう形で残しておこうと思う。
今回結論として言いたいことは『新世紀ウルトラマン伝説』はいいぞ! という事。
2016年に似たような方向性で作られたこちらの動画もオススメなので貼っておく。
ちなみにこれは完全な宣伝なんだけど、こちらの動画も是非是非見ていってください。(個人的にGEEDの証がお気に入り)
それではまたいつかどこかで。
*1:ちなみにクレジットを見ると分かるが、現在「ウルトラマンの中の人」を務める岩田栄慶氏がこの時既に参加している。どのウルトラマンの中にいるのかは不明。
*2:初代マンから当時の最新作であるコスモスまで
*3:このパパを演じているのが『ウルトラマンダイナ』にてコウダ隊員を演じた布川敏和氏。ちなみに服装もスーパーガッツのそれを改造したものと明らかにダイナが意識されており、実際劇中でもダイナに対して肩入れする節がある
*5:これがまた名曲なんだわ
*6:ただしナイスは省かれているのだが……
*7:後から調べたら『新世紀劇場版ウルトラマン伝説』というタイトルで各種音楽サブスクで配信されていた。必聴。
*8:ちなみに身長は666 m、体重は66,666 tと、ここにも投げやりさがうかがえる。ちょっとデモンゾーアっぽいよね
*9:これまでのツブイマの頑張りを見ていると、無いとは言い切れないのも事実だ
*10:『ウルトラマンティガ・ウルトラマンダイナ&ウルトラマンガイア 超時空の大決戦』の一場面
*11:シュノーケルと紙飛行機でどうやって深海までやってくるんだ、とかは決して言ってはいけない。絶対にだ
*12:深海だから声が出せないという理屈なのだろうが、直後に宇宙空間でマスクを外して叫んでいるなんて事も気にしてはいけない。絶対にだ
*13:正直ウルトラ文字って読むの面倒じゃない?
*14:『新世紀ウルトラマン伝説』なんか比にならないくらいのマイナー作品。1990年にOVAとして製作されたのだが、これを知っている平成生まれの人はどれくらいいるのだろうか…?